2016年3月8日に、超党派フリースクール等議連・夜間中学等義務教育拡充議連立法チーム(丹羽秀樹座長)のヒアリングにおきまして、不登校・ひきこもりを考える当事者と親の会ネットワークの代表「不登校法案への反対」「法案を夜間中学と分けて白紙撤回を」と意見表明いたしましたので、ここにご報告させていただきます。


活動報告
国会開会後、静かだった超党派フリースクール等議連が2月2日に再開され、動きが急にあわただしくなりました。
それに伴い当ネットワークの動きも活発になりました。以下にその活動の一端を報告いたします。
この他に当ネットワークの不登校を経験した当事者や親たちが議員訪問を続けております。

2月 2日 立法チーム勉強会 陪席 1名
2月12日 立法チームヒアリング、当ネットワークの代表が
      法案の反対・白紙撤回を表明・陪席 2名
2月16日 立法チームヒアリング 陪席 2名
2月17日 渋谷区で講演集会(講師:石川憲彦さん)を開催
2月19日 立法チームヒアリング 陪席 3名
3月 8日 立法チームヒアリング、当ネットワークの代表が
      法案の反対・白紙撤回を表明・陪席 3名
3月11日 立法チーム合同総会 6名


3月8日、議連立法チームにおきまして、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案」の新しい座長試案が提出されました。新しい座長試案は下記のリンクからご覧いただけます。
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(座長試案)平成28年3月8日 ←クリックしてください

当日の議連立法チームのヒアリングでは当ネットワークの代表が「私たち親も、同じように不登校のわが子を追いつめてきました」「親は変わることができますが、法律は変えられません」と強く法案の反対を訴えました。

下記に、当日の「意見書」を掲載いたします。(→PDF版

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<2016年3月8日 立法チームヒアリング意見書>


不登校とひきこもりを考える当事者と親の会ネットワーク 代表
登校拒否を考える会佐倉・千葉休もう会 世話人
下村小夜子

1.この法案は「不登校対策法」という新たな法案です。夜間中学の法案と分け、充分に時間をかけて慎重に検討してください。
 3月4日に公開された「義務教育における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律案」(座長試案)は、法案名が同じですが「通称フリースクール法案」から「不登校対策法案」へと立法趣旨が転換し、内容が大きく変わりました。これは新たな法案です。
 初めて法案の全容を知ったのは3月4日です。多くの国民は不登校対策法が国会に上程されようとしていることをまだ十分に知りません。学齢期の子どもを持つ保護者は、わが子が不登校になることを大変恐れています。わが子の将来を左右する「不登校対策法」はつくってほしくないと願っています。
 「不登校はどの子どもにも起こりうる」と文科省は行っています。従ってこの法律は全ての子どもにかかわります。そのためには趣旨が変わって木に竹をつぐようになってしまった「フリースクール法案」を夜間中学の法案と分け、一度白紙に戻し充分に時間をかけて慎重に審議して下さい。

2.文部科学省は1990年代以降、不登校対策を次々に打ち出してきました。
 生徒総数が減り続けるなかで、不登校の子どもは増え続け、2000年代に入って高止まりになっています。不登校対策をしてもなぜ不登校の子どもは増え続けるのか、まず不登校対策が適切であったか検証することが問われます。
 今回の「第三章 不登校児童生徒に対する教育機会確保等」(学校における取組みへの支援)は文科省の「不登校に関する調査研究協力会儀」の「不登校児童生徒への支援に関する中間報告」と内容をほぼ同じにしています。文部科学省の施策を更に法律として二重構造にする意図が納得できません。子どもたちがなぜ不登校になるのか、原因や学校教育環境をそのまま置き去りにしてきた結果、毎年新たに不登校の子どもが生まれ、状況を固定化し再生産しているのです。
現状の改善をせず、不登校の子どもと家庭を今まで以上に追い込む新たな法律には反対します。
●文科省がいままで実施してきた不登校の子どもの実態把握・ICTを使っての学習保証・教育支援センター・適応指導教室・特例校・「学校が居場所になる様」という施策がもり込まれています。今までやってきて、現状でもいじめや自殺は続いています。(むしろ、中高生では増えている。)それを費用対効果の見直しや施策の有効性を検証することなく法で固定化しようとしています。そこを原点にかえって真剣に議論すべきです。

3.こと不登校に関しては、対策を立てれば立てる程、こじれてきました。
こどもたちは学校を休めないことに苦しみ、追いつめられてきました。文科省は子どもが学校を休むことを問題にし、対策してきました。はじめから方向が逆だったのです。
例えば、約28年前、千葉市に初めて適応指導教室が設置される時、親の会として反対しましたが、今や全国に広がりました。それで、子どもは楽になったかというと、むしろ状況は悪化しました。
「学校に行けないなら、せめて適応指導教室」にと子どもの状況を無視して無理に行かされる子。大人の為に無理に行こうとして、具合が悪くなる子ども達の話が親の会で相当数出るようになり、適応指導を受けている途中で自殺した中学生もいました。
サポート校にも無理して行っている子どもが相当います。功罪、両方があります。
不登校への認識や価値観は変わらないまま、新しい器ができると、さらに子どもは無理を強いられる事になります。
●「フリースクール法案」を修正するのではなく、不登校を土台から考え直すことが必要です。この様に向かう方向が違うことについて、子どもたちがなぜ不登校をするのか本質がきちんと共有されていない段階で、全国の子どもに影響する法律が拙速につくられるのは、大きな問題です。
●文科省は今後、不登校調査の新項目として「90日以上欠席」「ほとんど欠席」という集計方法をつくったと報道されています。あくまでも不登校は子どもの問題行動と認識され否定されています。            
法律ができたら、不登校を問題行動と考える文部行政や教育委員会が運用します。どう考えても矢印が逆向きです。子どもの為に急ぐのなら、この認識を変える方が先です。

4.日本は1998年国連子どもの権利委員会から勧告を受けました。
「高度に競争的な学習環境が就学年齢の子どものいじめ・精神障害・不登校・中退及び自殺を助長している可能性があることを懸念する」
「学校制度及び大学教育制度を再検討するよう勧告する」
●しかし、いまだ有効な手立ては着手されないままの現状があります。教育行政だけでなく親も含む社会全体の問題です。
国連子どもの権利委員会の勧告を真摯に受けとめ「児童の権利条約」の内容を中心軸にすえた学校制度づくりを再検討して下さい。

5.必要なのは全ての子どもが「学校を休む権利」を持っていると明確に伝えるメッセージです。

「休養の必要性」(8条・13条)を読んでも、学校へ行っている全ての子どもに休む権利が保障されていると受け取れません。
 私の息子は28年前、小2~不登校。さみだれ登校の時、公園でクラスの子から「ズル休み」と石を投げられ、投げた中に当時の親友も一緒に投げてきました。その時、本人は学校での居場所を完全に失いました。
●不登校をする子どもを「ズル休み」と受け止める大多数の子どもたちの側に、学校を休めないことに対する不平等感と不公平感が根強くあります。石を投げられる子は今後も出続けます。
●又、完全に不登校になってからは、市教委から「登校督促状」が来ました。同じ親の会の人にもきていて、その人はショックで泣いていました。「ただでさえ苦しんでいるのに、何とひどいことをするのか、と市教委に電話をしたら「出すことになっている。決まりだから。自分に文句を言われても困る」という態度でした。
本来は子どもの「学ぶ権利」を守るための法律でも末端ではそうなります。
市教委に悪意はないが、今も不登校への無理解、偏見・差別がある現状で督促状が出ている例があると聞きます。同様のことがおこらないと、どうして言えるのでしょうか。
「学校」や「勉強」という言葉を口にするだけで顔色が変わり、部屋に閉じこもってしまう不登校の子に「学習支援」の押し付け、それを断れない子どもが増える可能性が大きいです。

6.私たち親も同じようにわが子を追い詰めてきました。
でも私たち親たちはソフトな登校圧力に耐えられなくなった子どもから「学校があるから死にたい」「自分ではこわくて死ねないから眠っている間に殺してくれ」「生まれてこなければよかった」と泣きながら訴えられて我に返りました。自らの価値観・学校信仰を問い直し、家を居場所にして、子どもの生きる居場所を保証してきました。
親は変わることができますが、法は変えられません。
●そもそも全ての子どもに学校を「休む権利」があるのだから学校を休む子が出るのは人間として当たり前の権利です。法律以前の話です。それをわざわざ法律に書かなければならないこと自体、おかしいのではないでしょうか。
それ位、休めない状況があるということです。不登校が問題視され、子どもの人権が尊重されていないということです。特に中学では、内申書などで出席日数が問題とされ成績以外でもしばられています。
その状況が生み出されている元を検証する方が先決で、やることの順番が逆です。

7.今、この法案が出たことは、社会的背景として教育とは何か? 学校とは何か? 根本が問われていることに他になりません。
 法案の作成過程に不登校当事者である子どもや保護者がほとんど参加できていません。
ごく一部の関係者(フリースクール関係者や教育委員会など)が発言と陪席を許されてきました。法案に懸念を持つ多くの不登校の子どもや当事者、親や保護者、居場所主宰者、小中学校の教職員などは、意見表明をする機会がほとんどありませんでした。
●今国会で足元から急に鳥が飛び立つように性急に、不登校対策法案をつくってほしいと求める子どもや保護者はいないと思います。
もし初めは不十分な法律だけどとりあえず上程し通してからまた変えていく、という考えだとしたら、それは影響を受ける側の子どものことを全く考えていない発想です。社会的弱者である子どもの命を危うくするものです。良くなるまで、待っている間にも子どもは影響を受け続けるのです。
多くの子どもや親が、本当に安心し納得できるもの、又はその方向を目指すものであるべきです。法案を通すことを自己目的化するのは社会的弱者である子どもの命を危うくするものです。
急ぐなら、手始めに国が全ての子どもたちに子どもは『学校に行くことは義務ではない』こと、『学校で学ぶ権利』と『学校を休む権利』を持っていること、『不登校はわるくない、休むことは必要だ』と全国の子どもたちと保護者、学校の教職員の人たちに発信することです。

〈提案〉子どもの現実から出発した取り組みを
居場所の保証、いじめによる被害救済、不登校でも不利益にならない社会の構築を目指して。
 法案は、夜間中学とは分けて不登校対策法を一度白紙に戻し、急がず丁寧に子どもの置かれた現状を子どもの立ち位置から見直すことが必要です。学校を休めず、いじめなどで命を断った子どもたちに安全な場を提供できなかった反省に立ち(これは私も含めた大人、皆が)出発点をそこに置いた調査をはじめることです。そして不登校しても不利益を被らない社会の構築に向けた議論を本気で始めることです。
「休みを認めたら、子どもが安易に休むことにつながる」という懸念の声があります。子どもたちは厳しい学歴社会の現実を前に、休まず頑張って学校へ通い続け、傷つき疲れ果て心身ともに動けなくなって不登校になる現実を知って下さい。
●どうぞ子どもたちのことを一番に考えてください。これ以上子どもたちの生きる力と未来を奪わないでください。
学校は社会の縮図です。学校が障害のある子もない子も、学校へ行くのが楽しい子も苦しい子や辛い子も、安心してともに存在できるインクルーシブな学校をつくって下さい。
「不登校支援学校」などをつくり、子どもたちを分けないで下さい。
●立法チームでは、全国で4300人いるといわれるフリースクールに通う子どもたちのために長年力を尽くし学んでこられました。これからは12万人にのぼる不登校の子どもたちと学校を休みたくても休めない50万人余の子どもたちの命がけの訴えを聞いて下さい。多くの不登校の子どもや不登校の経験のある当事者、親・保護者、居場所主宰者・学校の教職員・教委・市民など多くの声を真摯に聞く、丁寧な実態調査をして下さい。そこから、問題の本質が見えてくるはずです。
今回の不登校法案は夜間中学の法案と分けて、一度白紙に戻し、苦しい状況を生きる子どもたちの最善の利益のために再検討してください。

 この法案がこのまま通ったら「やっぱり学校は変えられないのだ」という不信とマイナスのメッセージになります。
 しかし立法チームが、全国すべての不登校に象徴される教育問題(社会問題)に本気で取組み、子どもの最善の利益を考え、子どもの側に立って取り組み始めたことが伝わると、それは子どもたちと保護者にとって、大きな希望のメッセージとなるでしょう。

以上