2016年3月11日に、超党派フリースクール等議連・夜間中学等義務教育拡充議連立法チームの議連総会が開かれました。法案は議連総会では意見がまとまらず、座長案として「各党持ち帰り」となりました。各党の文教委員会で審議した結果を議連に3月末までに持ち帰えり、最終的なまとめとするというタイムスケジュールが発表されました。
当ネットワークは「夜間中学と分けて『不登校対策法案』を白紙に戻すように」との要望書を提出しました(下記に全文を掲載)。



総会では各党から6人の議員が懸念、疑問、注文、法案の不十分さなどを次々に発言されました。当日の発言の内容の一部を紹介いたします。

浮島智子議員(公明党)「つらくても学校に頑張って行っている子、校長室や保健室登校の子に休むことを法案のどこで保障されているのか?
神本美恵子議員(民主党)「学校への登校圧力が強くなっている、学校現場がどうなるのか、学校に行きづらくなっている子に対する懸念が消えない
畑野君枝議員(共産党)「不登校12万人のうちフリースクールに行っているのは3%。10ヵ月やってきたというけど、8ヵ月はフリースクールの問題の立てつけ。2月から不登校のことになってまだ2ヵ月。どういう声があるかということをちゃんと聞いてほしい
議論が展開する中で質問に答えた文部科学省の前川喜平 文部科学審議官は「学校がすべての子どもにとって安心できる場所ではないということは承知している」と答え、会場は一瞬静まり返りました。

活発な議論が続く中、開始されてから30分ほどで半ば強引に司会の林久美子事務局長が討論を打ち切り、法案は議連としてはまとまらず、座長案として「各党持ち帰り」となりました。


当日配布された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案」座長案は、下記のからご覧いただけます。
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(座長案)平成28年3月11日 ←クリックしてください

また、当ネットワークが提出した要望書と資料のPDF版はこちらからご覧いただけます。
 ・要望書(20160311当事者と親の会ネット)
 ・文部科学省の不登校対策について(20160311当事者と親の会ネット)


下記に要望書を掲載いたします。

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超党派フリースクール等議員連盟立法チームの皆様
夜間中学義務教育拡充など議員連盟の皆様

2016年3月11日
不登校とひきこもりを考える当事者と親の会ネットワーク代表 下村小夜子
共同代表 子ども相談室「モモの部屋」 内田良子


<要望書>

立法チームは市民に開かれた公開の場で不登校している子ども、不登校を経験した当事者や保護者、学校の教職員など 現場の市民の意見を聞く機会を充分につくり不登校の現実を理解してください。
現状より子どもと親が追いつめられる今の不登校対策法案を白紙に戻し、夜間中学のみの法案にして下さい。

 現在検討されている法案は、当初は「フリースクール法案」として取りあげられてきました。しかし、法案が二転三転する間に内容が大きく変わり(転換し)2016年3月8日公開された座長試案は「不登校対策法」になっています
 立法の本来の趣旨と性格が根本的に変わったこの法案を、なぜ今、急いでつくる必要があるのか不登校の子どもやその保護者、不登校にかかわる多くの市民は納得できません。
 今回の不登校対策法(座長試案)第三章は、文部科学省の
不登校に関する調査研究会議」の「不登校児童生徒への支援に関する中間報告」とほぼ内容を同じにしています。同じ内容の不登校対策を法律としてつくり、不登校をしている子どもと家庭を今以上に追い込むことに反対します
 

●骨子案を読んで、この法律ができたら追いつめられて命を断つ子どもがもっと増えるだろうと危機感をもつ不登校経験者や保護者たちが多くいます。
子どもたちがなぜ不登校をするのか、その原因や学校教育環境の改善ができていない現状で、いじめや体罰などの被害者である不登校の子どもに「不登校支援学校」など学校復帰対策を講じるのはあまりにも酷です。
まず優先すべきは被害者の救済です。人間関係と集団の圧力、先生の指導に深い傷を負った子どもたちはとにかく「そっとしておいてほしい」と望んでいます。心身の回復には年単位、数年以上かかる子どももいます。
●多くの子どもたちは、いじめや懲罰的指導、体罰などの被害を受けていても学校を休むことができません。文部省及び文部科学省の不登校対策が50年に及んだ結果、「義務教育の間は学校を休んではいけない」と子どもも保護者も思いこまされています。評価、競争、管理のある学校ではどの子どももいじめる立場・いじめられる立場の両方を経験する可能性があります。
いじめを受けて深く傷ついている子どもが護身用にナイフやカッターを身につけて登校を続けている現実があります。不登校をすることができずに、いじめられる辛さを回避するためにいじめる側にまわったり、非行へ向かう子どもがいます。
●いじめられても我慢して学校通い続け、心身ともに限界にきた子どもが命を断つことが続いています。
不登校は「命の非常口」です。不登校対策を法律化することで非常口を閉じることはしないでください
いま必要なのは、全ての子どもたちに「学校を休む権利」があることを明らかにし、そのことによっていかなる不利益を受けないことをきちんと保障することです。
●法案を白紙に戻し、国連「児童の権利条約」で保障されている権利の内容を子どもの学校生活で具体的に保障する学校教育環境をつくる必要があります。学校は社会の縮図です。障害のある子どももない子どもも、学校へ行くのが苦しい子辛い子にとっても子どもの最善の利益が保障される居場所にして下さい。
全ての子どもにとって安心した居場所になるインクルーシブな学校が求められます。
子どもに関する法律は本来、生きる希望と将来への夢がもてる社会を保障するためにつくられるものだと思います。今回の法案もそのために立法に着手したと聞いています。
●現在検討されている法案は、現状より子どもと保護者にとって、更に厳しいものになっています。
立法チームの全国で約4200人といわれるフリースクールへ通う子どもたちのためにヒアリング調査を重ね、時間をかけて法案をつくられたと聞いています。これからはフリースクールに通っていない全国12万人余の不登校の子どもたち、更には不登校することができず保健室登校や教室外の各種の教室などに通う50万人余りと推測される子どもたちと保護者の実情を知るところから始めて下さい。

 どうか子どもと家庭を今以上に追い込む不登校対策の法案は白紙に戻してください。これ以上不登校対策法で不登校の子どもを差別しないでください
 時間を充分にかけ、不登校の子どもとその保護者、不登校を経験した当事者、学校現場の先生や養護教員など、全国各地の不登校の現場にいる多くの市民に経験や意見、懸念などを聞いて下さい。
 本法案を白紙撤回し、国連「児童の権利条約」を骨格にした、全ての子どもたちが生きる希望と将来への夢が持てるような学校教育環境をつくって下さい