第190回通常国会において、反対の声が日ごとに高まる中で推進派が成立を急いでいた不登校対策法案は、5月31日に開かれた「超党派フリースクール等議員連盟」「夜間中学校等義務教育拡充議員連盟」の合同議連総会で継続審議との方針が確認されました。
法案は賛成会派(自民、民進、公明、おおさか維新)から国会に提出されたものの、衆議院文部科学委員会で審議されなかったため、法案は「つるされたまま」の状態にありました。
6月1日の文部科学委員会で継続審議にするための手続きを経て、次の臨時国会(9月下旬に召集で調整中)で審議されることになりました。
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写真提供:伊藤書佳さん

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5月31日の合同議連総会では次のような話し合いが行われました。

●馳浩 文科大臣(衆議院・自民、夜間中学等議連会長、フリースクール議連幹事長)
夜間中学等議連の会長として(法案を成立できず)関係団体の方に大変申し訳ない。お詫びする。
しかしあきらめてはいない。臨時国会で必ず成立させるべく与野党で協力する。
次に大臣の立場として既に法案の成立を見越して、失礼ですが法案に即した学習支援のあり方、基本指針・基本計画などを準備している。法案がなくともできる限りのことをするのが行政府の責務であると思っている。
もちろん立法があるのにこしたことはない。来年度の概算要求など取組む。

●河村建夫 議員(衆議院・自民、立法チーム顧問、フリースクール議連会長)
法案はまだ(衆議院文部科学)委員会に付託されておらず、「つるされたまま」議案として降りてきておりません。
廃案にならないよう、次の国会で成立するように手続きをしたい。

●笠浩史 議員(衆議院・民進、立法チーム座長代理・幹事長)
馳前座長・丹羽現座長のもとで座長代理をつとめてきた。夜間中学の事務局長の立場で参加してきたが途中、夜間中学は切り離して法案を成立をとの意見もあったが、馳座長ほかの気持ちもあって義務教育段階の子どもの学びを守っていくため、いっしょに責任を果したい。
賛成・反対の立場をしっかり受け止めている。臨時国会までによりよい中身にするために最終的な詰めをする。付帯決議に出された問題点も改めて整理して、満足いただける成案となるよう努力する。

●浮島とも子 議員(衆議院・公明)
ひとりの子どもの命を守るということでやってきた。文科委員理事としてくやしい思いでいっぱい。臨時国会で成立をめざす。

●富田茂之 議員(衆議院・公明、立法チーム顧問)
ちょっとくやしい思いでいっぱい。夜間中学については文科省で学び直しの機会を確保してくれたことは議連の成果。
できれば9月1日(自殺が最も多い新学期)を越えないうちに「法案を成立させたい」。「学校を休んでいい」とのメッセージを送って、新学期を迎えたい。

●吉川元 議員(衆議院・社民)
話を聞いて色々な声があることを知った。こういう法律は当事者にとって100パーセントにとは言わなくとも、多くが理解し賛同していただける内容にしなければいけない。
当事者の声がしっかりと入ったより良いものにできるように努力していく。

●畑野君枝 議員(衆議院・共産)
2つの議員連盟が合同で取り組んだので難しかった。一致する夜間中学はすぐにでも法律にすべきと言ってきたが、夜間中学だけ成立できないのはどういう事情によるものか十分に伺う機会がなく残念。
フリースクールにかかわる問題は、途中から不登校全体にかかわるものに内容が発展した。その一致点は何か検討が必要になってきた。何よりも「いのちを守る」ことが不登校の子どもにとって大事ということでは一致している。どういう法律にしていくかは今後の研究が必要。
馳大臣が「法律が通らなくてもすぐにできることがある」とおっしゃたが、フリースクールの財政支援、夜間中学に対する支援などを政府でがんばっていただきたいと思う。また9月1日「(学校を)休んでいいんだよ」とぜひ大臣から発していただくことなど、今できることをすぐやっていただきたい
法案は時間をいただいたということで、当事者の皆さんがまとまって「つくってもらってよかった」と思える法案になるようもっと議論を尽くしていただきたい。教職員の声、学校現場の声を聴いていないということが課題として残っている。

●丹羽秀樹 座長(衆議院:自民)
次期国会でも立法チームを引き続き開催しながら、議連も継続しながら成立に向けて協力体制をつくっていきたい。
法案は必ず通ると確信していた。この合同議連は議運(衆議院議員運営)の委員長が(河村)会長で、議運の野党筆頭が笠先生、衆議院文部科学委員会の浮島先生は理事、吉川先生・畑野先生も委員に入っていて強い布陣と思っていた。


以上が議連総会での発言要旨です。
発言内容を聞くと誰が不登校の子どもと保護者の困難な状況を理解しているかが良くわかります。
広く当事者の声を聞いて、慎重な審議が必要であると主張してきた社民党の吉川議員。共産党の畑野議員は夜間中学の法案は先に通し、不登校対策法案は法律が必要かどうかも含めて慎重に審議するように対案を出しています。

馳文科大臣「失礼ですが法案に即した学習支援のあり方、基本指針・基本計画などを準備している。法案がなくともできる限りのことをするのが行政府の責務である。もちろん立法があるにこしたことはない」と述べています。馳大臣の発言を聞いていると、この法案は文部科学省による文部科学省のための法案であって、不登校の子どものための法案ではないということがわかります。
通常国会で法案の審議を十分にすることなく、拙速に成立を急いだ背景に”文科省の来年度の概算要求にあわせるためだ”と一部で言われていました。
更に馳大臣は「夜間中学校等義務教育拡充議員連盟」の会長を務め「超党派フリースクール等議員連盟」の幹事長も兼ねており、三位一体でなんでも思い通りにできるカードを握っています。
日本の政治の枠組みは憲法における三権分立といわれていますが、行政府と立法府の関係は一体どうなっているのでしょうか。見識ある国会議員はたくさんいると言われているのに、一人に権限が集中するこのあり方に疑問を感じさるをえません。
馳浩文部科学大臣記者会見録(平成28年6月2日)でも同様のこと(9分20秒頃から)を述べています。)

「不登校対策法案」については、文科省が1990年以降取組んできた不登校対策の集大成になっています。
少子化の時代に不登校対策をすればするほど不登校の子どもが増え続けるという対策は、いわば失敗策です(下記のグラフ参照)。
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その検証もしないで、いじめや体罰・学校生活に起因して学校を休む小・中学生を法律で「不登校児童・生徒」と定義し、不登校支援学校をつくって不登校の子どもを排除することや不登校の子どものカルテを作成し子どもの心身の状況と学習面の管理強化を図ろうとしています。
文科省の不登校対策を不問に付し、学校教育環境の改善を二の次にして、不登校を子どもの問題に転化しようとする法律はいりません。すべての子どもにとって必要なのは、安心して学校を休む権利の保障、休んだことでいかなる不利益も受けない保障です。

臨時国会に向けて、更に法案反対の声を各方面から伝えていく必要があります。
これから参議院選挙が始まります。法律をつくる権限を持つ国会議員が一票を持つ市民・有権者の声を真剣に耳を傾ける数少ない機会です。
全国各地で地元の選挙区に帰ってくる議員に直接、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(通称 不登校対策法案)」反対の声を届けてください。
また、より身近にいる地方議会の議員の方にも法案反対の声を届けてください。
今後とも不登校対策法案反対にむけ、ご支援をお願い申し上げます。